flint>flint blog>2009年> 8月>17日>近道を求めない

近道を求めない

本来手間が掛かったり、難しかったりする事柄が、ちょっとした工夫などで簡単に行えてしまう、いわゆる「裏技」。 最近では、テレビや書籍、そしてネット上に、そうした裏技に関する情報があふれています。 この手の情報は需要も高く、「○○を△△する、たった□つの方法」といったタイトルが冠された本やブログエントリなどが人気・注目を集める傾向があります。

しかし世の中、そんな「うまい話」はそうそう転がってはいません。 そうしたノウハウの殆どは、実際に試してみると思ったほどの効果がなかったり、内容が曖昧だったり、ごく一般的な事柄の言い換えに過ぎなかったりと、およそ実用に耐えないようなものです。 それなのになぜ、こうした「裏技」の情報は今日もまた絶えることなく出回り続けているのでしょうか。

ソフトウェアの世界でも

ソフトウェア開発・プログラミングの分野においても、こうした「裏技」は人気の高いトピックのひとつです。

  • 初心者でもプロ並みのレベルのプログラムが作れてしまうフレームワーク・プラットフォーム
  • 多くのエンジニアの頭を悩ます難問をスマートに解決するスクリプト
  • 生産性を飛躍的に向上させる、わずか数項目の心掛け

等々、それこそ「魔法のような」技術があちらこちらで毎日のように発表されています。 エンジニアは、こうした膨大な量の情報を追い駆け、日進月歩の発展に付いていかねばならない過酷な職業である……などとお考えの方も多いのではないかと思いますが、それは大きな間違いです。

確かに、コンピュータは、ここ20年ほどで台頭してきた新しいジャンルであり、(最近はその速度が緩んできてはいるものの、) 他の分野と比べて格段に速い進歩・革新が見られます。 しかし、そんな現在のコンピュータ技術もまた、これまで情報技術に携わってきた人々の創意工夫の積み重ねを基礎として成り立っており、何ができて、何ができないかといったことは、それなりの精度で確かめられています。 そうして積み上げられてきた常識・定石を覆すような画期的な発明を行うことは、容易なことではありません。 少なくとも「ちょっとした」思いつきや工夫でなんとかなるほど軽い話ではないわけです。 (もしそれでなんとかなるのであれば、先人たちはどれだけマヌケだったのかということになってしまいます。)

急がば回れ

結局のところ、「裏技」を求める人々の心理の裏には、苦労せずに成功したい、というムシのよい考えがあるのではないでしょうか。 「プログラムを書けるようになりたいが、地道で退屈な勉強はしたくない。」 「画期的で高品質なサービスを作りたいが、研究開発や人材教育などのコストはかけたくない。」 そういった願望を持つ人々にとって、この手の「裏技」が非常に魅力的に思えることは想像に難くありません。 しかし、そうした「裏技」の99.9%は「スカ」であることは心に留めておくべきでしょう。

「裏技」で大成功を掴んだという話が出てくることもたまにはありますが、よくよく調べてみると、下積みが実を結んだものだったり、どこかにゴマカシがあったりと、大抵は順当な話に落ち着くものです。 何かを成し遂げたいと思ったならば、必要な知識・技術を見定めて、それらを身に着けていくのが最も速く・確かな方法。 「急がば回れ」とはよく言ったものです。

成田 (基本あっての応用)
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