flint>flint blog>2014年> 3月>26日>息抜きの作法

息抜きの作法

ペンローズ・タイル

先日、探し物をしていたら、部屋の片隅から会津にいた頃に作った玩具 (左写真参照) が出てきました。 これは段ボールペンローズ・タイルと呼ばれる、周期的でないパターンで敷き詰めることのできる形に切ったもの。 これを上手く並べるにはちょっとしたコツが必要で、全体の構造を考えながら進めていかないと、ピースを入れられない隙間ができてしまいます。

仕事に詰まったときなど、床に座ってこれを並べていると、しばらくは無心でタイリング作業に没頭できるので、気分転換にはうってつけ。 ピースの数がそれほど多くないので、気が付いたら30分も経っていた、ということもありません。 こうした気晴らしの手段をどれだけ持っているかということは、仕事を長く続けていく上では意外に、そして、なかなかに重要なことなのではないでしょうか。

そんなわけで、今回は私のリフレッシュ法のいくつかを紹介してみたいと思います。

料理

チキンステーキ

どんな仕事をしていても、生きている以上、食事を欠かすことはできません。 この避けることのできない定期作業を、その準備段階まで含めて楽しむことができれば、人生はかなり楽しくなることでしょう。 実際のところ、料理にはかなりのゲームあるいはパズルの要素が含まれています。

買い物の段階では、価格や季節 (旬), 栄養価, 彩り, 消費期限, ストック (自宅の冷蔵庫内の食材) といった要素を考慮しつつ、商品を選択してきます。 次いで、調理の段階では、所要時間の見積りや作業の段取りが必要に。 豆腐の水を切っている間に野菜を刻んでおく、レンコンの灰汁を抜いている間に湯を沸かしておく、といった具合に、作業のパイプライン化を図らなければ、適切な時間で食事にありつくことができません。 調理の失敗や、貰い物による大量の食材発生といった突発的なイベントにどう対処するか、というのも腕の見せ所です。

自分自身の包丁の取り回し技術や、加熱時間の見極めの精度などが徐々に向上していくのを実感できるのも嬉しいもの。 更に、同じ料理でも、食材や調味料などに変化を付けながら、自分の好みに合うスタイルを工夫・探求できるのも、自炊ならではのことでしょう。 あるいは、「今日は醤油の使用を禁止してみよう」といった具合に、縛りプレイを楽しむこともあります。

また、副次的な効果として、外食の際にはプロの技術の精緻さや手際の良さに驚嘆するとともに、これを観察して真似る楽しみも出てきます。 自分で実際に経験を積むことで、下手は下手なりに、熟練者・達人の「凄さ」をそれまでよりも一段高いレベルで理解・実感できるようになるのは、どんな技能でも同じですね。

本の読み返し

私は本を何度も読み返す習慣がありますが、これもまたリフレッシュには最適。 おおまかな流れは既に頭に入っているため、基本的に読み込みの流れが速い上に、「続き先が気になってページをめくる手が止まらない」といった状態に陥るようなこともありません。 そのため、昼食後のコーヒータイムなどの短い時間を使って行うことができます。

同じ本であっても、関連する知識を別の情報源から学んで再び戻って来ることで、最初に読んだときには見えなかったものに気が付くことが多々あります。 例えば、以下に挙げる『呪われたナターシャ』は、予備知識なしでも興味深く読むことができますが、ソビエト連邦において推進されていた無神論政策や、ロシア正教会の歴史などを一通り頭に入れてから読み直すことで、その内容をより深く理解することができました。

呪われたナターシャ

しかし政権は若い世代から徐々に、呪術・宗教を否定する無神論的世界観を浸透させていった。 その際に重要な役割を果たしたのが学校教育である。 革命前の学校では聖職者によって宗教教育がおこなわれていたが、ソ連の学校学校 (シュコーラ) (日本の小中高校にあたる)では、教師は子どもたちを戦闘的無神論者として育てなければならないとされた。

彼らは教会の閉鎖などの実質的な反宗教活動にも動員された。 このようなかたちで無神論教育が徐々に浸透した結果、呪術や神の力の「リアリティ」は、農村においても徐々に失われていった。


先に紹介したように、呪術や超能力はしばしば神の力によって成就すると語られる。 しかしロシア正教会はこのような考えを激しく非難し、憂えている。 教会にとっては目的にかかわらず、これらは悪魔の力を借りる反キリスト教的行為である。

しかし正教会の闘いは成功しているとはいいがたい。 協会は呪術への興味をしずめられないばかりでなく、皮肉なことに、むしろそれを助長しているとさえいえる。 なぜなら正教会は、呪術を含むオカルト実践のモラリティは否定するが、その効力の「リアリティ」は否定しない。 このことは右の引用から明らかである。 むしろ積極的に「リアリティ」を支持しているといってよいだろう。 正教会は呪術の「リアリティ」を肯定するという意味において、ソ連時代の無神論イデオロギーよりもはるかに呪術に近いところに位置するのである。

図説 金枝篇 (上) 図説 金枝篇 (下)

また、『金枝篇』に目を通し、類感呪術, 感染呪術など、様々な地域の呪術に共通してみられる基本的な思考形式について学んだことも、再読を楽しめた要因のひとつかも知れません。

実は、この『金枝篇』に関しては、私がヨーロッパの地理をいまひとつ把握できていないため、理解が雑になっている部分が多々あります。 そのため、これを頭に入れた上で再度読んでみれば、こちらにも新しい発見があるのではないかと期待しているところ。 楽しみのタネはまだまだ尽きません。

良い仕事は良い休息から

どんな仕事でもそうですが、作業の効率や質を維持するためには、身体だけではなく、精神をも適切に休ませる (あるいはリラックスさせる) ことが不可欠。 そういった意味において、息抜きの方法を考え、これを模索することもまた仕事の一部であると言えそうです。

「これはオススメ」という息抜きの方法があれば、参考にさせて頂きたいので、コメント欄などにて教えて頂ければ嬉しく思います。

成田 (足りないのはむしろ緊張感という説)
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

投稿者
URI
メールアドレス
表題
本文