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「管理」は楽じゃない

前にいた職場には、年に数回ほど、上司が長期の出張で不在にする時期がありました。 しかし、その間にも、彼の判断・決裁を必要とする事案が発生するため、就業時間のおわりに、全社員 (自分を含めて5, 6名) のその日の業務内容や伝言をまとめて、上司にメールで報告することが必要となります。 午後五時くらいになったら、各人にIMを通じてその日の作業内容の簡単な説明 (「○○社ファイルサーバのディスク故障対応」等) を求め、その内容を規定の書式に収まるように編集する、というのがおおまかな業の流れ。

ところが、納期が近いなどの理由で忙しい人はしばしば、メッセージを送っても気付かなかったり、返信している余裕がないといった状態に陥ります。 そのような場合には、彼 (または彼女) の席まで出向いて直接聞き取りをしたり、同じプロジェクトに携わっている同僚に、「○○さんは今何をしてるの?」と尋ねることで、おおよそのステータスを把握するようにしていました。

この手法の狙いは、情報を確実に、高い精度で引き出すことにあります。 忙しい相手から情報を得るポイントは、回答に要する手間をできるだけ低く抑えること。 エディタを立ち上げて文章をタイプするよりは、口頭で一言「○○システムの自動監視の仕掛けを作ってた」と答える方が負担が小さいであろうことは想像に難くありません。 更に詳細な情報が必要になった場合でも、追加のメッセージを受け取って、それに返信するよりも、口頭でのインタラクティブなやりとりを選択する方が時間と労力の節約にもなるでしょう。 そうなれば、文章に書き起こすのが面倒な瑣末な事案についても、「あ、そう言えば...」といったカジュアルな振りで情報が提供されることも期待できます。

現場の状況を上に報告するという「管理」の一端を担う立場からすれば、情報収集は最も重要な仕事。 そこで得られた情報の質と量は、直ちに「自分の仕事」の質と量に直結します。 であれば、これを高めるための努力を払うことは、何にも増して優先すべき事案と言えるのではないでしょうか。

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成田
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会津へ行ってきました

先の土日は、私の大学時代の指導教官 (Prof. Nikolay N. Mirenkov) が今年度を以って退官されるということで、そのお祝い (兼研究室の同窓会) のため、芦ノ牧温泉へ。 70歳を迎えてもまだまだ元気な先生に会ったり、研究室の同僚の近況について聞いたりしているうちに、昔が懐かしくなり。 そこで、会津の山中をうろつき回っていた頃の記録を引っ張り出して、何本かアップロードし直してみました。

会津は現在、NHKの大河ドラマ『八重の桜』で盛り上がっており、市街地・観光地を問わず綾瀬はるか (のポスタ) に占領されていますが、そうしたところから少し離れて、山中へと踏み入れてみるのも一興かと存じます。 これからは気温も上がり、木々の緑も鮮やかさを増していく時期ですので、皆様もぜひ会津へと足を運んでみてください。

成田
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オシロスコープと確定申告

1月の下旬から、常駐ではなく在宅で仕事をしています。 自宅で働けるというのは、何かとメリットがあるもの。 時間のやりくりが楽ですし、何より最高にリラックスできる環境なので、体力の消耗が少なくて済むのがありがたいですね。

さて、現在のお仕事はというと、とある国立の研究機関から依頼された情報セキュリティ関連ソフトウェアの開発中。 右の写真にもあるように、部屋の一角が機材に占拠されてしまっています。 ハードウェア制御のため、これまで使ったことのないライブラリを利用してプログラムを組む必要があり、なかなかに挑戦的・刺激的なエンジニアリング生活を送っております。

ところで、確定申告の締め切りがそろそろやってくる頃。 今年は昨年の反省を活かし、自作の簿記システムで、スマートに (?) 手続きが進行中です。 このシステムも、ゆくゆくは製品にできればと思ってはいるものの、世の中には既に機能豊富な会計ソフトが数多く出回っているため、新規参入の障壁の高さは並大抵のものではないでしょう。 もし、現在お使いのソフトに不満を感じている方がいらっしゃいましたら、開発の参考にさせて頂きますので、当方だけにこっそりと教えてください。

成田 (今のところ、カフェや公園で仕事をする必要性は感じておりません。)
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でかいテーブルの恐怖

あけましておめでとうございます。 1月も既に半ばではありますが。 昨年10月の下旬から始まった仕事のスケジュールがこれまでと較べてかなりタイトなもので、ブログの更新もすっかり滞っておりました。

今回の仕事を含め、大学時代から、何故か他人が作ったシステムの分析・改修を手掛けることが多いのですが、それらの中には動作しているのが不思議なほどに設計・実装がグダグダなものが少なくありません。 特に、データベースを利用するような比較的規模の大きなシステムにおいては、そうした出来の悪さは「手の施しようのない」悲惨な稼動状態 (加えて、にも関わらずなんとかしなければならない凄惨な作戦状況) を生み出すことに。

このエントリでは、その要因の一つである巨大な (カラム数の多い) テーブルについて述べていくことにします。 テーブル定義が肥大化する要因を個別に検討する前に、私のおおまかな判断基準を示すと、

  • カラム数20超: 脳内で黄色ランプが点灯
  • カラム数60超: 脳内で赤ランプが点灯
  • カラム数100超: 赤ランプが回転

といった具合になるでしょうか。

ちなみに、これまでに遭遇したことのあるテーブルのカラム数の最大値は376。 定義をコンソールで確認しようとしても、テキストが一瞬で画面上方にスクロールして飛び去ってしまいます。(泣)

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成田
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増刷御礼

仕事が途切れ、二ヶ月半に渡る夏休みを過ごしていましたが、先月の下旬から新しい仕事が始まりました。 それに伴い、昨年七月に独立したときに作った名刺 (参考: 営業資料作成中) が底をついたので、増刷を発注。 当時は「この名刺を使いきるまで事業を続けられるのだろうか」と不安を抱いていましたが、周囲の方々のご支援とご協力により、今日に至るまで flint の名前での活動を続けることができております。

今度の仕事は、Access/VBA によって構築されたアプリケーションの改修作業 (の支援)。 またしても未経験のプラットフォームということで、学ばなければいけないことが多く、退屈している暇はありません。 技術者、殊にプログラマは、常に新しい技術を習得し続けなければ生き残れないということを改めて感じています。

なお、日本全国の Access ユーザの皆様におかれましては、テーブルやカラムの名前に全角英数字や半角カナおよびそれらの入り混じった文字列を使用することは出来る限り控えて頂きたく、ここに伏してお願い申し上げる次第です。m(_ _)m

成田
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震災の「呪い」としてのEM菌

東日本大震災からおよそ一年半が経過しました。 当時私が住んでいた会津若松市から東へおよそ100kmの地点にある福島第一原発およびその周辺地域はもとより、日本の至る所で、多くの人々が今なお、事故によって飛散・堆積した放射性物質に苦しめられています。

放射性物質による汚染が厄介なのは、その度合いが目に見えないこと、健康への影響が (あるとすれば) 長期を経て現れることに加えて、通常用いられる「消毒」「殺菌」などの手法が悉 (ことごと) く無効であるため。 例え放射性物質を一箇所に集めることが出来たとしても、それを洗おうが焼こうが、以前と変わることなく放射線を出し続けます。 むしろ、水と共に流れ出たり、灰に混じって飛び散ることによって、土壌や建築物のより深い部分まで拡散させてしまうことになりかねません。 従って、除染作業は、科学的に正しい知識を以って慎重かつ計画的に進める必要があるわけですが、現在、福島県やその周辺に、そうした事情を「食い物」にする手合いが跳梁しています。

例えば、「放射性物質を分解する」「内部被曝に効く」との触れ込みで販売される味噌・乳酸菌などの発酵食品や、機能水などがそれ。 放射性同位体は、「通常の元素」と化学的に非常に良く似た性質を持ち、それ故に、生物は各種の同位元素を識別することができません。 (その性質を利用して、同位体マーキングなどが行われる。) また、その放射性崩壊は化学反応ではなく、それよりも遥かに高いエネルギーを必要とする領域で発生する現象であるため、生物がいかなる作用をしたところで、それを阻止・阻害あるいは促進することは論理的に不可能であり、そうした現象が厳密な観測において確認された例も皆無です。 また、「酵素が放射線によって傷付けられたDNAを修復する」といって売り込まれるものについても、虚偽であると断定してよいでしょう。 DNAの修復に酵素が作用することは事実ですが、一口に「酵素」と言ってもその種類は山ほどある上、外部から摂取した酵素がそのまま体内で作用することは (少なくともDNAポリメラーゼについては) ありえません。 もしも、彼らの言う通りに、外部から取り込んだ酵素 (= タンパク質) がそのまま体内に拡散して作用するならば、アレルギーによって生命の危機さえ招くことになります。

そうした全く根拠も効果もない「放射能対策」を、不安と戦いながら自らの生活を支え、復興を進めている人々に売りつけ、貴重な金銭, 労力, 時間, 健康を詐取する連中は、「正真正銘のクソ野郎」どもと呼ぶのに相応しい存在。 「溺れる者は藁をも掴む」とは言いますが、だからと言って、藁を差し出してそれに縋らせる行為を正当化するロジックなど、どこにもありはしません。

追記 [2012/10/26]

本エントリ中で紹介していた動画が見れなくなってしまいました。 その内容を知りたい方は、以下のページを参照してください。

EM除染検証番組をぜひ全国ネットで - 杜の里から
http://blog.goo.ne.jp/osato512/e/af892477816c3e8e82e8b776e302ede9
フジテレビEM菌報道の文字越こし - Togetter
http://togetter.com/li/395287

追記 [2013/10/27]

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成田
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直線と点の距離

三次元形状を扱うプログラムを作成している場合、直線と点の距離を求める処理が必要になることが多々あります。 例えば、マウスクリックによってオブジェクトやその頂点を選択できるようにしたい場合などがそうでしょう。 二次元空間内であれば、直線と点の距離は

などに掲載されている式で求めることができますが、これを三次元に拡張した場合、平面と点の距離を求めることになってしまうため、目的の用途に使うことはできません。 この問題を正しく解くためには、直線と球の交点を求める式から出発する必要があります。 以下、図と式を簡略化するため、二次元内の直線と円の交点を求める方法をもとに解説を行っていきますが、最終的に得られる式の形に違いはないので、次元の違いには拘らずに以下を読み進めてください。

図1
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成田
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メタヒューリスティクス

現在、仕事のオファーが途切れているのですが、せっかく自由になる時間ができたので、営業活動と並行してサーバのメンテナンスや独自システムの開発などに手を付けています。 早期に公開して利用してもらえるようなシステムの計画もあるにはあるのですが、それとは別に若干毛色の変わったもの - 進化的アルゴリズムによる他のシステムへの応用が可能な問題解決の仕組み (メタヒューリティクス) を試作中。

地球上の生物は、(ごく大雑把に説明すると、) DNA上に塩基配列としてコードされた遺伝子を、突然変異自然選択によって進化させることで、複雑で高度な機能を有する肉体 (頭脳もその一部) を作り上げてきました。 この進化の仕組みを、肉体というハードウェアではなく、ソフトウェアへと適用すれば、複雑で高度な機能を有するプログラムを生成することもできるのではないか、というのがこのプロジェクトの基本的な発想です。

とは言え、汎用性のあるものを作ろうとすれば、その規模は非常に大きなものとなり、その開発も緻密な設計と長い期間を要するものに。 最初からそのようなものを目指してしまうと、アプローチの妥当性を検証したり、その結果を修正・改良へとフィードバックさせることは困難になってしまうでしょう。 そのため、現在は非常に限定された範囲 (ドメイン) の問題を解く仕組みを用い、そこで得られた知見をもとに、より広汎な問題を解けるものへとステップアップしていくことを企図しています。

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成田
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法律とビジネスと

Business Law Journal [Oct 2012]

私はこのブログにおいて「武雄市図書館問題」を取り上げ、そのプライバシー情報の取り扱い姿勢について批判してきました。

その最初の記事にも書いたように、特定個別の事案を批判するのはこのブログの性格上不適当であるという認識はありましたが、この問題をめぐってのIT業界の不穏な動向に危機感を覚え、上記の記事を書いた次第です。 そんなわけで、今後はこの問題への言及は行わないようにするつもりでしたが、ここに至ってまた新たな「悪しき流れ」が起こりつつあるため、これを食い止めるためのカウンタとして、急いでこの記事を書き始めました。

問題に気が付くきっかけとなったのは、高木浩光氏の以下のツイート。

Business Law Journal 2012/10月号 http://www.businesslaw.jp/contents/2012... 「ミログ第三者委員会報告書から考える プライバシー情報 ビジネス利用の問題 達野大輔弁護士」は必ず読むこと。 すごい。

これを目にした瞬間、「まずロクな内容ではないだろう」という予想が立ちました。 というのは、この記事見出しで触れられている「ミログ第三者委員会報告書」というものが公正中立を欠くどころか、その遥か斜め上を行くトンデモナイ代物だったからです。 というわけで、書店へと出向いてこの「Business Law Journal 10月号」(1,680円)を買ってきた読んだのですが、結論から言うと、予想を裏切らずしっかりとひどい内容でした。

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成田
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「客観」の落とし穴

社会の中で他者と関わるとき、とりわけ不特定多数を相手とする場面では、自分の考え方・感じ方、即ち "主観" を離れて、より広く理解・共有されることが可能な "客観" をベースとして行動することが重要である、というのはよく言われるところ。 実際、モノゴトの捉え方や理解の仕方は人によって異なるため、「私はこう思う」と言って主観をぶつけあうだけでは、相手の考えを理解したり、落とし所を見つけることは難しいでしょう。 そのため、そうした場面では、互いに了解しうる素朴 (プリミティブ) な事実の確認や、検証可能な尺度を用いた定量的な論述によって議論を進める必要が出てくるわけです。

ところで、この客観というものはそれ単独で超然と存在するものではありません。 客観というのは、複数の主観が共に認めうる事実・理論と、そこからの推論によって導かれるものによって構成されるもの。 従って、それを認める主観群と基本ルールを共有しない別の主観がやってくると、その客観はまた一つの主観に過ぎないという見方を否定することはできなくなります。

と、ここで話は大きく変わってキュウリについて。 世の中には「キュウリが嫌い」という人が少なからず存在するようです。 まぁ、どんな食材にも独特の風味や食感があるので、キュウリが苦手な人がいても不思議はありません。 しかし、私にとって意外なのは、彼らの何人かは以下のようなことを主張すること。

あんな栄養のない野菜なんかを喜んで (買ってまで) 食べる人の気が知れない。

確かに、Wikipedia のキュウリ#栄養の項目にも 「キュウリは全体の90%以上が水分で、栄養素はビタミンC, カロチン, カリウムなどが含まれるが含有量は非常に低い。 ギネスブックには、世界一カロリーの低い果実として掲載された。」 という記述があり、栄養価が低いことは間違いない様子。 けれども、私が抱いた疑問のポイントはそこではありません。 「あなたがキュウリを嫌いなのは味や匂いが原因であって、栄養的に貧弱だからではないでしょう?」と。 寒天大好きな私の立場はどうなっちゃうんですか。

どう考えてみても、彼らがキュウリを嫌う理由は、その栄養ではなく、味や匂いにあるのは明らかです。 けれども、そうした味や香りに対する感覚はあくまでも主観的なものにすぎません。 「どうしてこの味 (匂い) が嫌いなのですか?」と問われたとしても、「とにかくイヤなんだ」としか言いようがないのではないでしょうか。 論理的に説明することは不可能である上、どれほど理屈を尽くしたところでキュウリを嫌いでなくなるとは到底思えません。 これは主観に属する類の問題であり、主観に基づいて述べるのが正しく、客観的に議論しようと考えるのがそもそもの間違いなのです。

しかし、私たちの社会には主観に基づいて行動することイコール我侭・身勝手と考える傾向があることもまた事実。 本人にとってはキュウリを食べることが切実な苦痛であるにも関わらず、周囲から「我慢しろ」だとか「大人になれ」などと言われてしまったり。 また、実際にそう言われることはなくとも、「内心では身勝手な奴だと思っているのだろう」と考えたり、あるいは自分で自身の嗜好を我侭と捉えて苦しむこともあるようです。 そうした葛藤を退ける手段のひとつとして出てくるのが、「私が食べないのは、主観的なワガママではなくて、ちゃんした (客観的な) 理由があるんだ」という主張の組み立て。 栄養価云々というのは、それに使えそうなキュウリの欠点 (と考えられるもの) に過ぎず、それ自体にはたいした意味はありません。

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成田
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